No.17 エグゾーストシステム part1

No.17 エグゾーストシステム part1
『乗って楽しいAタイプエンジン』には低中速トルクが重要です。
静かで、吸排気効率が高まるエグゾーストシステムとはどんなものなのでしょうか。
 
LCB+触媒+中間タイコ+中間パイプ+リアタイコ+テールパイプ

LCB(Long Center Branch)とは、シリンダーヘッドに直接装着される排気管のうち、複数の排気流路を1つにまとめる多岐管をエグゾーストマニホールド(通称:タコ足)と言い、英国を代表する【ジャンスピード】【マニフロー】、この2社の1300cc用LCBを選択する際には純レース用3in1(スリーインワン)を除けば、意見や感想は各々あると思いますがどちらも大差無く、性能的にもほぼ同一と考えられております。
しかし排気管は、ガソリンエンジンに限らず全ての内燃機に対してトルクを左右する重要部分です。
現代のエンジンでは触媒を早期に活性化するため、なるべくタコ足を短くし、シリンダーヘッド直後に配置する構造が殆どですが、LCB後方にしか付けられないミニの場合(純正位置での効果については排ガス検査の知識がある方に教えて頂かないことには判りませんが)、後々の車検もあるので純正位置が良いと思います。ここで触媒は排気抵抗が大きく消音効果が高いのでリアタイコ(後方ボックス)はどれを選択しても大きく出力変化しない…ではありません。選択によっては低中速トルクが大きく減少し、例え7,000rpmで何十馬力出せてもトルク不足により4段変速機(ギアボックス)ではカバーし切れず、高回転でしか車速への追従感を味わえないミニになってしまう場合があります。
最近の高額な車両に積まれた高性能な高回転型エンジンでは、開閉バルブを用いて排気圧をコントロールしてトルクの落ち込みをエンジン回転上昇と共に出力アップを体感させる様なアイディアが採用されています。複雑なコントロール、部品点数増、コスト面から純正装着される一般車両はまだ少ないですが、エンジン回転数で排気圧を正確にコントロール出来れば効果的なトルクコントロールも可能だと思います。しかし、SUキャブのミニで排気圧を正確にコントロールすることは困難です。
簡単な内部構造の消音器(サイレンサー)は、外見優先で商品化するコストが掛からない手軽な方法の一つで、法律上の問題もありながら市場から消える事はありません。そしてパイプ径が太すぎると流速は落ち、排気圧が掛かりにくく負圧も発生しづらくなり、それが吸気の邪魔となってトルクが薄くなる事も考えられます。

   

そして、最良のエグゾーストを探すために、数値的な性能としては言い表し難いポイントもあります。
・音量は出来るだけ静かに抑え、音質に拘りたい。
・太いテールエンドは排圧が一定に為りづらく、また太いパイプ径は流速を高めにくい。
・触媒に頼る消音ではなく、消音器内部の構造と体積(容量)を活用したい。
・走行中ぶつけると硬い素材はクラック(ヒビ)が入り易く、裂け/割れやすくなるため、優先するのは最低地上高(車高短)か素材か。
・薄い部材で軽量化したエグゾーストマフラーは共振音が発生し易いが、軽さは魅力的である。
・ピカピカに磨くステンレスと、塗装で仕上げるスチールでは、どちらが維持し易いか。
・後姿(魅せ方、見え方)は、消音器の大きさ(体積)やエンド形状、太さ(外径)、出口方向・角度で印象が変わる。

チューニングプランを一気に実行できる人も少ないと思われます。少しずつ納得できる仕様へ近づけるために、何に”コダワル”か決めておくことも大事だと思います。

低中速トルクが重要です、乗って楽しいAタイプエンジンには。             [ part 2 へ続く ]


≪材質と特徴について≫
強度高い材料は、薄く製作できることで軽量化につながり、チタン合金やステンレスのようにマフラー素材として重宝されます。また一般的に、音質や音程は管長・容積以外にも素材の硬さや厚みによっても影響し、硬いと膨張しにくく音を吸収しにくいため排気音が甲高く乾いた音と表現されます。管径や管長、チューニングの度合いなど様々な条件で音量音質が変わってくるため一概には言えませんが、材料について幾つかの特徴を記します。

スチール フランジ部からサイレンサーまで様々な部位で古くから多用され、他素材に比べて重く錆びやすいが素材の柔らかさと板厚が関係し、スチールならではの低音を奏でる排気音は拘りの一つとされます。
取り回しや形状などのデザイン度(加工性)が高く、生産コストが低いことで販売価格も安価となります。耐熱塗装やメッキ処理など防錆対策を必要とするため、テールパイプにクロームメッキを施し、装飾性高く仕上げたものもあります。
ステンレス
(ステンレススチール)
サビや腐食に強いステンレスはフランジ部からサイレンサーまで様々な部位でスチール同様に用いられます。スチールに比べて強度が高いため薄く軽量に仕上がる反面、素材は硬く切断や曲げなどの加工性が低く、生産コストは掛かる。甲高い排気音など音質も魅力的な素材とされます。
材料費もスチールとの価格差は少なく、素材を研磨することで鏡面仕上げが可能なため、比較的安く美しい外観を長く保てるマフラー材料として純正からアフターパーツにまで多用されます。
チタン
(純チタンとチタン合金)
スチールやステンレスよりも丈夫でサビにも強く、高価ながら魅力的な素材のチタンは、純チタンとチタン合金の二つに分類されます。素材特有の綺麗な焼け色や甲高い排気音などエキパイやサイレンサーに、高強度や軽量化で用いられるチタン合金(64チタンなど)に対して、サイレンサー外周に用いられる純チタンは加工性に優れるが軽量化の恩恵は少ないです。
チタンは磨耗に弱く、焼きつきかじりが発生するなど切断面の冷却、切削工具のメンテナンスが必要で、また溶接ではシールドガス必要など、加工コストがかかることで販売価格も高額になります。
アルミ
(アルミニウム合金)
軽量かつ放熱性に優れたアルミはサイレンサーや取付ブラケットなどに使用され、エキパイ部などにはほとんど使用されません。素材は柔らかく、切断、切削、曲げなど加工性にも優れ、カラーアルマイト処理により着色も可能です。
カーボン
(カーボンファイバー)
炭素繊維を用いた強化プラスチックで、高い強度と軽さを併せ持つ材料として様々な用途に使用されますが、加工難しくコストが高いためマフラー素材としてはサイレンサーカバーなど外見のみという場合があります。
加圧可能な窯で成型されたドライカーボンは剛性高く硬いため、薄く仕上げることで軽量な部品となります。カーボンクロスの織り方(平織、綾織)で見栄えが異なり、金属とは異なる繊維独特の存在感となります。
インコネル 超耐熱合金の商標で、高温時の耐久性が非常に高く、比重の近いステンレスよりも薄く製作することで軽量化に最適とされます。ただしマフラーに適したパイプが流通しないため、板形状より制作が必要など加工コスト高く、宇宙航空機産業、各種プラントなどまだまだ一般的な材料ではありません。

 

 
 
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