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No.02  

1275ccで約75馬力(BHP)のMK-1クーパーSから始まるチューニング(出力向上)は約20%UPでピッタリ90BHPを7000RPM以下で搾り出すには何が必要で、又どうして90BHPなのか、100BHPオーバーでは何故駄目なのかを、簡単にご説明致します。

仮にボアを拡大して1293cc(+20)のディッシュピストンをチョイスして90BHPを得ようとすると、現行のA+エンジンの純正クランク・コンロッド等の主要部品が殆んど問題なく再使用でき、又耐久性にも全く問題は発生しないと言えるのです。

これはキャブクーパーにもインジェクションクーパーにも同等で、8000RPMを求めるようなエンジンに対して純正コンロッドは確実に役不足となり、最悪の場合エンジン&ミッションパーツの80%がスクラップとなるのです。

日本のメカニックの方々の多くは、きまじめな考え方は良いのですが、スチールクランクとスチールコンロッド(又はHコンロッド)が必ずセットパッケージのように使用されているケースが多いのですが、これはどちらも高額な部品の為に公道用90BHPのミニ1293ccには「ちょっと勿体無い」と言えます。

その理由は、金額の事は別として日本の交通事情・スピードの上限そして、エンジンレブ7000RPMを考えればワンボックスカーにマグホイールを装着して40%扁平タイヤをチョイスするようなもので、「それ程、役に立たない」 それは、マグと扁平タイヤで自己満足の世界をウキウキさせるだけなのです。

反対意見の方もいるかと思いますが、純正クランク&コンロッドとオールスチールエンジンで正確にダイナミックバランスをどちらも行い、同一の90BHPを出力した異なる、この2基のエンジンの差をテスト運転して、どちらがオールスチールエンジンかを見分けることの出来るドライバーは限りなくゼロに近く、音質や振動に若干差が有る事は理解できても断言は出来ない筈です。

無限の資金があって自分の満足度が全てに重要と考える方には後々これ以上の最強・最高のエンジンは無いと言える様なスペックをお知らせ致しますが、ここではまず、無駄な必要以上の投資は止めて、限りなく「完全」に近づけましょう。

1293ccのボアに対して間違っても「フラットトップピストン」を選択してはいけません。圧縮比が高くなりすぎてしまい、トルク不足のエンジンに成りやすく、クラッチミートの際に「ジャダーリング」や「息継ぎ」の多い性格のエンジンとなることが多く、簡単に言うならば「使いづらい・乗りにくい」ミニへと変身してしまうでしょう。
この辺の「フィーリング」は個人の感覚的な差が大幅にあり上手には説明できないと思いますが、プロの考え方でいくと一度チューニングしたエンジンの圧縮を上げるのは簡単安価で、その逆は困難高価ということなのです。お解かりにならない方も多いはずですが、1mm厚のヘッドガスケットを0.8mm厚のヘッドガスケットに変更しただけでも確実に圧縮比は上がりますが、その逆のヘッドガスケット1.5mm厚は存在しないのです。
それなら0.8mm厚のヘッドガスケットを2枚使用すればOKか?いやいや全然ダメです。2枚重ねは高級鰻重だけでエンジンにはダメです。それではレーザーで銅版1.6mm厚を切り抜けば…大変高価な作業となるはずです。

ついでに、もうひとつミニのボディーの小さい穴を拡大するのは簡単ですが、多少でも小さくするのも困難高価となる訳です。
必ず『ディッシュピストン』を進言致します。そうそう1,000ccの時は『フラットピストン』を選択しましたが、それはストロークの差があり、1,000ccは短いためで、1,000ccと1,300ccはチューニング(調整)は若干異なっているという事です。

そして更に1,300ccで部品のミスチョイスは、全くとんでもない失敗に直結しており、1,000ccより難しいことは確実なのです。その第一歩が、ピストントップの選択と言えるのです。

そして次にピストンの材質ですが、鋳造と鍛造とがあり、これは相当【治金技術】に知識を持ったメカニックでも簡単には説明出来ない部分であり、アルミホイールの有名ブランドBBS社の宣伝に良い説明がされていますので、あちらを読んでから、ここから先を読んで下さい。
早い話が、ドロドロに熔けたアルミ材をピストンの型に流し込んで、その後切削する方法と、アルミ材をプレスして打ち抜き、その後切削する方法の事です。
当然プレスされた方が強度は高くなります。鋳造ピストンは内部の素材の配列がバラバラで小さな空洞(巣)が入っているといわれます。90BHPのエンジンで在るならば、そして7000RPMのレブリミットを厳守するならば、鋳造ピストンでも問題ありません。

多くのミニのピストンはコンロッドとピストンピンが温度差を利用して「圧入され固定する」構造で約50年前のエンジンとしては良くあるタイプですが、これを何とかフルフローティングにしようとする方が時々いるのですが、《改良コスト》=《効果》=《リスク》で考え合わせると《無駄》となることがほとんどです。
良い方法を積み上げても、その結果は失敗ばかりといった話を良く聞きますが、以前はカローラやランサーのピストンなどを試された方も過去には多く居たはずですがまるでダメ。
その理由のひとつは、ピストンリングの問題でした。多くの経験は大切ですが、根拠の無いチャレンジは大体遠回りと思ってください。

次にピストンピンの軽量化は必ず効果を上げますが、これも程度の問題で、両端をテーパー状の穴にする訳ですが、図のように中央は穴を拡大しないことが重要です。そしてピストン全体の重量とフリクションロスをどの位まで低減させるかも大きな問題のひとつといえます。

『フルフローティング』とは、ピストンピンとコンロッドとの接合をフローティング状態、それは固定しないで自由に回転できるようにする事です。理論上は高回転で有利に働く訳ですが、コンロッドの穴にピストンピンが入り、自由に回転出来るという事は、仮に20mm直径の穴に20mm外径のシャフトは入らず、必ず誤差を発生させることになり、その為に各材質の熱変形まで計算に入れて、その誤差の数値を求めることになり、日本人の大好きな“精度”の高さを最も必要とする所は、ピストンピン、ピストン自体、でして、これを素人知識で改良など行うことは絶対に止めたほうが良いといえるのです。

純レース用ピストンで極薄のピストンリングが入っている(リングのテンションも相当低い)タイプがありますが、これを公道用ミニに選択するのは最も危険です。耐久性は3,000km位で終了してしまいます。何でも高価でレース用は、高耐久力と信じてはいけません。【勝利】だけが目的のレース用は、短命でも勝利さえすれば良いわけですから公道用には全く無駄となります。

10数年も前になりますが、コスワースという超有名チューニング会社からフォードBDR用ピストンを輸入販売していた頃、三和から買うより直接個人輸入した方が“安い”と考えた多くの店で『レース用ピストン』を輸入し、エンジンを組み立て、3,000kmも走行しない内に白煙を噴くようになり、組み間違えでも無いし、異物混入もないし・・・?!?!
それは『純レース用』を購入した事が原因でした。その答えはピストンリングがレース用の為にブロックの壁を傷めてしまうほどの材質だったためで、判ってしまえば何てことも無いのですが、そのコスワースの純レース用ピストンを使用したメカニックは相当悩んだことでしょう。
世の中には良過ぎて役立たずになってしまうことが時々あるようで、それが多大な出費になることだけは防がないといけません。無用の長物もダメですが、粗悪なモノも削除していかないと、後々とんでもない事に発展するわけです。

次にオフセットボウルピストンはピストントップの“ヘコミ”が中央ではなく若干左右に寄っているタイプのピストンのことで、これはインレットバルブの位置のなるべく真下にヘコミが来る方が、バルブが開きガソリンと空気がシリンダー内に入り易く、また流速を高めると言われており、その効果は大きいと思いますが、どれほどの差が発生するかは正確にはわかりません。どの英国人のチューナーも『純レース用』エンジンに対する知識と経験は豊かであっても、公道用のチューニングエンジンに対しては別段1,293ccに拘らず、どんどん出力向上の各ステップを話すばかりで、このオフセットボウルピストンに対しては殆ど興味も無いといった風で『ヘコミの位置より圧縮比』と考えているようです。

このピストンを好んで使用していた【オセリーエンジニアリング】は現在アストンマーティンの専門工場になってしまい、多分誰も判らないとのことでしたが、時間をかけて調べようと思います。
ピストンの話を整理しましょう。

  1. 鋳造ピストンで十分:90BHP/7000RPM以下なら。
  2. 必ずディッシュトップを選択(6〜7cc) * ディープディッシュ(11cc)はダメ。
  3. フラットトップは止める。圧縮を下げるは高価な作業になる。
  4. レース用は「無駄」で「危険」な部品
  5. フルフローティングはリスク拡大で7000RPMには不要。
  6. 国産車ピストンもF1ピストンもミニには不向き。

といった具合になります。
90BHPのエンジンが完成したら、どこかで馬力チェックを行い、そのチェックシートを土台に1,300cc〜1,600ccまでのお話も出来るかと思います。
次回はコンロッド(コネクティングロッド)の説明をいたします。

【追記】

ミニ用のピストンには、代表的なメーカーとしてはイギリス製では純正ピストンメーカーであったHepolite(ヘポライト)や、OMEGA(オメガ)、ACCRALITE(アクラライト)、そしてアメリカ製のJEピストンなどがポピュラーですが、どのピストンメーカーであっても大差はありません。 しかし『ヘボレーサーはタイヤの所為。ヘボメカニックは材質の所為。』にしたがる様で「●●製はリングが弱い」「●●製はガジョンピンがズレる」「●●製は溶けやすい」など語られております。しかし、「▲▲製は×××。」が本当ならばイギリス・アメリカ内でなぜ今日までそのピストンメーカーは存在しているのでしょうか?今も世界のどこかでレースが行われ、▲▲製が活躍している事も事実なのです。限界を超えれば必ず破損する部品に対して、正しい使い方をしない(知らない)人は、それにさえ気が付けば簡単な事なのに盲信した自分が見えないためでしょう。

EN40Bのスチールクランクも、Hタイプコンロッドでも、F1エンジン供給しているフランスのメカクローム社のピストンだったとしても、車を全く知らない方がタコメーターも見ずにアクセルを踏み続ければ、シフトダウンでオーバーレブもするでしょうし、この時にオイルを規定量まで入れてなかったり、薄めにセッティングしていれば必ずエンジン破損に繋がります。

何でも使い方が重要なのです。

 

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